銀の風

一章・新たなる危機の幕開け
―8話・子供らしい一時―



フィアスに誘われ、一行は町で最も大きい広場にやってきた。
中央には大きな噴水があり、広場を囲むように樹木が植わっている。
また、あちらこちらの露店にはちらほらと人影も見受けられた。
噴水の周りで井戸端会議をする主婦たち。あちこちを見回しながら、町中の見回りをする兵士。
そして、ひときわ大きな木の影には、幼い子供たちの姿がある。
一行を見つけると、リーダー格の少年がこちらに向かって大きく手をふり始めた。
「おーい、早く来いよ〜!」
一人だけ木の上に登って、大声で呼びかけてくる。
「あ、カッシュお兄ちゃん!みてみて〜、新しいおともだち〜!」
木の上から、ずっと来るのを待っていたのだろうか。
その姿を見つけたフィアスは、大はしゃぎで駆け出した。
「あ、遊ぶんかいな・・ι」
リュフタは、少々顔を引きつらせた。
「おっしゃー久々!おいフィアス、待てよ〜〜!」
しかし、リトラとアルテマは逆にとても嬉しそうだ。
いくら冒険をしていても子供は子供。
旅の間に、大勢で遊ぶ機会が無かったためだろう、どこか生き生きとしている。
リュフタを置いて、二人ともフィアスの後を走っていった。
「しゃあないなあ、付き合ったる……。」
一人置いていかれたリュフタは、苦笑しながらその後を追った。


小一時間ほど経過しただろうか。
最初は鬼ごっこをしていたのだが、飽きてきたので、他の事をしよう。
と、言う事になった。そこで、全員で町はずれの林に向かった。
そこで、誰かが言い出したわけでもなく、自然とおしゃべりの場に。
「すっげーなフィー!で、でその化け鳥どうなったんだよ??」
カッシュ(リーダーの少年)が、目を丸くしながら言った。
「夕飯にしちまったよ、こいつのな。」
「あ〜〜〜、ないしょっていったのにー!」
リトラに余計な事を言われ、フィアスは頬を膨らませて抗議する。
が、本人はまるで聞いていない。わざとらしく、口笛なんて吹いている。
「リトラ〜〜!!」
「フィ〜ι落ち着けってば」
フィアスより少しだけ年上の男の子が、呆れながらなだめる。
「ところでさ、あんたらの家って何かやってる?」
アルテマは、話題転換にと話を持ちかける。
「おれんちは父ちゃんがお城で騎士やってんだ!
父ちゃんは、結構強いって評判なんだぞ〜」
カッシュは、腰に手を当てて得意げに言った。
木製の短剣を振り回して父親の真似しているあたり、本人も剣を習ってるのだろう。
「あたしのお母さんは、白魔道士なんだよ〜!でね、お父さんは商人さん!
二人ともお仕事バリバリだよ〜。」
まけじと、気が強そうなポニーテールの少女が言った。
この子の両親は、母親が城勤めなのかもしれない。
白魔道士は、魔法や薬草の知識を生かして、病院を開く者も中にはいるらしいが。
「おいらんちは、二人とも道具屋だよ〜。時々手伝わされるんだよね〜」
なんだか参っている様子で肩をすくめるのは、さっきフィアスをたしなめた男の子、カイ。
どうやら、この年頃の男の子の割りに、結構しっかりしているようだ。
ちなみに、フィアスの友人たちは上が7歳、平均で4〜5歳である。
「そんな事よりさ〜、と〜っておきのネタがあるの!聞いてくれる〜?」
ちょっと意地悪っぽい笑みを浮かべながら、二つわけの髪の少女は得意げに仲間達に言う。
一行も含め、皆興味津々だ。
「ねえ、ずーっとずーーーーーーーっと北のお山におっきなへびがでるんだって!知ってる??」
『大きな蛇??』
異口同音に聞き返す面々。皆、首を傾げたり目を丸くしたり色々だ。
「そう!おっきなへび!お父さんたちが話してたんだけどね、
茶色くて、ドラゴンみたいにうろこがカチカチらしいよ。」
「茶色くて」
リトラがポツリと呟く。
「おっきくて」
フィアスも呟く。
「うろこがカチカチ」
そして、アルテマも呟いた。
何気ない連係プレーが成立している事に、三人とも気がついていないが、それはどうでもいい。
ともかく、3人ともその蛇が気になるようだ。
無論、他の子供らも例外ではない。
皆して、身を乗り出して彼女の話に聞き入っている。
特に、怖いもの知らずの男の子たちは。
「でさでさ、そいつどこにいんだよ?!」
カイが、目を好奇で輝かせている。
「え〜・・そこまでは言ってなかった。
だって、あたしが聞いてるのばれちゃって、お話やめちゃったんだもの。
だから、分かんなかったのー」
そう言って、彼女は困り顔をして両手を腰に当てる。
「そっかー・・ん、待てよ!」
と、いきなりカッシュが何か思いついたようにポンと手を打った。
そして、ぱっとリトラとアルテマのほうに振り向いた。
「お前らさ、『冒険者』って言うんだろ?だったら、その蛇探してきてくれよ!」
『はぁ?!』
2人……それにリュフタは唖然としてカッシュに問い返した。



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久々にUPだ〜(ほんとだよ)今回は、皆遊んでる(笑)
まぁ、皆子供だし。それに、同世代の他愛無い話から情報ゲットって言うのもやってみたかったので。
子供の好奇心が、次回大遠征の元になる〜。(待て